地元の中・高校生と創ったACP演劇ー終活フェスタで5年ぶりに上演!

先日、練馬区で開催された終活フェスタにて、茨城県鹿嶋市の中高校生たちによる演劇『おばあちゃんの話』が上演されました。

え?練馬区なのに、茨城県の鹿島市の中高生たち・・??


そう、この作品は私が5年前に茨城県神栖市で開催した「終活フェス」のために、当時の高校生たちと一緒に作り上げたものです。まさか、時を越えて再び人々の前で演じられる日が来るとは思ってもいませんでした。このブログでは、このACP(人生会議)に関する演劇の誕生秘話、そしてなぜ今回東京都練馬区で上演されることになったのか、を紹介していきたいと思います!

目次

茨城県神栖市「終活フェス」から始まった挑戦

この取り組みの原点は、令和元年度の茨城県神栖市 在宅医療・介護連携強化事業でした。神栖市は全国平均に比べて在宅医療の供給体制が非常に限られており、「自宅で最期を迎える」という選択肢を持てない方が多い現状がありました。
その課題に対し、地域住民に在宅医療を知ってもらう前段階として、「人生の最終段階において自らの価値観を考え、家族と共有するプロセス」――すなわちアドバンス・ケア・プランニング(ACP/人生会議)の普及が重要だと考えました。

その想いから、2018年度に好評だった「人生会議を題材とした演劇」を再び企画し、鹿嶋市・清真学園の演劇部に協力を依頼。中高生たちに自ら赴いてACPの講義を行いながら、双方向のディスカッションを重ね、最終的には生徒たちの手で台本を完成させました。
脚本は「人生会議を行った場合」「行わなかった場合」の2つの結末を描く構成とし、観客が“自分ならどうするか”を自然に考えられるよう工夫しました。

2019年の神栖市の終活フェスでは約300人の市民が来場し、「演劇がとてもわかりやすかった」「ACPを自分ごととして考えるきっかけになった」と多くの反響をいただきました。公演を終えた中高生たちからも、「自分たちの地域でACPを広めたい」との声が上がり、まさに“若い世代が地域の命をつなぐ”象徴的な瞬間でした。

その後、大好評だったため2020年にも公演を‥と準備を進めていたところ、まさかのコロナ禍へ突入‥。何とか開催するために全面的にオンラインでの終活フェスに急遽切り替え、なんとか上演することができました。

ただ、その後私が異動となり、何となく寂しい終わり方になってしまったなぁと思っていたのですが・・。

偶然が重なって生まれた“奇跡の連鎖”

そして5年後――。
練馬区のNPO法人「楽膳倶楽部」さんが練馬区終活フェスタの準備中に、この演劇に関する記事をインターネットで偶然見つけてくださり、今回の上演につながりました。
茨城で生まれた小さな地域活動が、東京で再び花を咲かせる。まさに奇跡のようなご縁のつながりです。

今回の上演では、当時の後輩たちが新たに台本を受け継ぎ、中・高生主体で再演してくれました。なんと会場には当時台本を書いてくれたSさんも関西から駆けつけてくれて、当時の台本作成に関わった想いを語ってくれました。祖父の終末期の体験をもとに作成していったこと、それにより人生会議の大切さを学ぶことができたこと‥など立派なスピーチをしてくれました。当時はまだ中学生?高校生?くらい‥立派になったなぁと子供を見るような思いでした(笑)。

孫世代の視点から命や家族を語る姿には、言葉では言い尽くせない力があり、会場全体が温かい空気に包まれていました。

「演劇」という形で伝える終活の力

終活やACPは、どうしても“重たいテーマ”と思われがちです。しかし、演劇という形で伝えると、感情や人間関係を通して自然に共感が生まれます。
観客は登場人物の心の揺れを通して、「自分だったら」「家族だったら」と想像しながら物語に引き込まれ、気づけば“自分の人生”を考えている。これこそが、演劇ならではの教育的・社会的な力だと改めて感じました。

私自身、医師として在宅医療・緩和ケアの現場に立つ中で、いかに「自分らしい最期」を支えるかを日々考えていますが、今回の舞台を見て、“伝える手段の多様性”の大切さを再認識しました。

ご縁と感謝、そしてこれから

この再演は、当時の高校生、顧問の先生、地域の方々、そして新たに関わってくださった練馬区の皆さんのご尽力があってこそ実現しました。
人と人とのつながりが、時を超えて新しい形で息づく――その尊さを深く感じた一日でした。

当日お越しくださった皆さま、本当にありがとうございました。皆さんの言葉一つひとつが、私の原点を思い出させてくれました。

「終活」は“終わりの準備”ではなく、“これからをどう生きるか”を考えるためのもの。
今回の経験を通じて、地域や世代を越えて“命の対話”を広げていくことの意義を改めて実感しました。

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